R18創作BL小説ブログです。性表現を多分に含みますので、18歳以上の方のみ、ご覧になって下さい。

(R18BL)アイランドキッチン第1話
 名前を呼ばれたような気がして、中原悠司はシーツを干していた手を止めた。ブルーサックスのコットンシャツから出たすんなりした色白の手を目の上にかざし、辺りを見回す。
 今日は初夏の日差しがさんさんと降り注ぎ、汗ばむような陽気だ。
 きっと洗濯物がよく乾くぞと思いながら、ベランダから下を覗いてみた。
 この家の主であり、中原の最愛の人でもある柏木晃彦のナチュラルなベージュ色のブルゾンに身を包んだ長身の姿がテラスに見えた。
 少し茶色がかった髪がまぶしい陽光を通してきらきらと光っている。両手には、家庭菜園で取れたのであろう野菜を籠に山盛りに持っていた。
「呼びました?」
 ベタンダから声をかけると、柏木が上を見上げて微笑んだ。
 一緒に住むようになってもう3ヶ月が過ぎ、すっかり見慣れている顔のはずなのに、未だにその切れ長の目を持つ端正な顔で笑いかけられると胸がどきりとする。
「そこにいたのか。洗濯なら、乾燥機に入れてしまえば早いよ」
「お日様の匂いが好きなんですよ」
 柏木にそう返しながら、せめて洗濯ぐらいはさせて下さいと中原は心の中で呟いた。

 もう一時も離れていられなくて柏木の家に同居したのはいいが、柏木は会社の仕事がなくなって手が空いた途端、メイドサービスを断って自ら家事を完璧にこなしだした。
 家中をピカピカに磨き上げ、仕事から帰ってくる中原を待つのは栄養計算とテーブルコーディネートまでが完璧な食卓だ。
 これではまるで奥さんをもらってしまったようだと、中原は困惑した。
 自分が亭主だとすると、勤務先から出る給料では、とてもこの家を維持できないだろう。
 どうしよう、二人で僕のマンションに引っ越した方がいいんだろうかなどの中原の心配をよそに、柏木は会社経営をしていた頃の人脈でしょっちゅうパーティに呼ばれては、次の仕事を探り、とうとう料理研究家、兼テーブルコーディネーターとして仕事をするようになってしまった。
 さすが柏木というべきか、結構な額をまた彼は稼ぎ出した。
 その上、家事も手を抜かないので、中原は身の置き所がなくて洗濯を自分の仕事に定めたのだが、少し目を離すと手早い柏木にされてしまう。

 休日の今日は久しぶりに思う存分洗濯が出来て、すがすがしい気分の中原なのであった。
「……わっ」
 ベランダの柵に肘をついて、のんびり風に吹かれていた中原は、突然後ろから長い腕に抱き寄せられて驚いた。
 振り返ると柏木が泥だらけの顔で笑っている。
「ああっ!シーツに泥が!!」
「あとで、僕が洗っておくよ。それより、是非、君に聞いておきたいことがあったのを思い出してね」
「……なんですか」
 自分の仕事をふいにされて、少しふくれっつらの中原は尋ねた。
「あの冬の日、君を抱いたのは誰だ……」
 柏木の目は、刃のようにぎらりと光っていた。
 まずい。
 赤石が危ない。
「え、えっと……」
「答えて……」
「柏木さんこそっ、琥珀のネックレスをあげたい女の人がいたんじゃないですかっ」
 よし、反撃できたぞ。
「……女?なんのことだ?」
「古い話かもしれませんが、僕はずっと心に引っ掛っていたんです」
 柏木はしばらく眉を寄せて考えていたが、はっと得心した表情で顔を上げた。
「ああ、あの琥珀のネックレスか。あれなら最初から、君の中に挿れてよがらせるつもりで買ったんだよ……」
「なっ……」
 中原の顔が真っ赤に染まった。
「あの日、僕は夕食を作って君を待っていた。でも、いくら待っても君は来ないし、料理は冷めてどんどん不味くなるし、最悪だったよ」
 柏木は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔になったが、表情を一転して明るくすると、「君を迎えに行ってからは最高だったけどね」と、笑った。
 中原はますます赤くなった。
「そうだね。今夜あたり、もう一度ネックレスを挿れてあげよう」
「……遠慮させていただきます」
「今夜は、たっぷり濡らして広げてから、優しく挿れてあげるよ……」
「もうっ!ばかっ!」
 中原は泥のついたシーツで柏木をばんばん打った。

 柏木が身体に打ち付けられるシーツを鷲掴みにするとぐいっと自分の方に引っ張った。シーツを掴んでいた中原も、つられて柏木の方へ転げ込む。
 気がつくと中原は、ベランダの床に広がった生乾きのシーツの上に組み伏せられていた。
「……午後から、近所の奥様方相手の料理サロンがあるんでしょ」
「テーブルコーディネートも食材の下ごしらえも終わった。まだ1時間ぐらい時間がある……」
 柏木の唇が首筋に落ちてきた。
 たったそれだけなのに、中原の身体は甘くとろりと溶け出してしまう。
「……んっ」
「明るいお日様の下で、君を抱きたいな……」
 柏木の長い指に、シャツのボタンをひとつまたひとつと外され、剥き出しの肌に暖かな日光が当たった。
 中原は土と太陽の匂いのする髪に口付けし、腕を伸ばして柏木を引き寄せた。
 
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