百貨店美術部所属の赤石徹は、数日後に迫った特別企画展の開催準備に追われ、百貨店の一角にある美術館内を慌ただしく動き回っていた。
文化的価値も高い美術品を扱うのは細心の注意が必要で、貸出先との様々な細かい契約や保険業務にも神経を使う。
赤石はビビットな色合いのネクタイの結び目に指を入れて緩めると、太いフレームの眼鏡を外して目元を揉んだ。
疲れが溜まった身体での勤務はミスを招く。
帰り支度をするため、ロッカールームへ赤石は足を向けた。
コートを羽織り、メタリックシルバーのブリーフケースを手にロッカールームを出ようとした時、部屋の奥に人影があるのに気がついた。
「……中原?」
外商部所属の同期、中原悠司が長めの黒い前髪の下の二重の目を中空に向け、しなやかな身体を奥の壁に持たせかけてぼんやりと立っていた。
中原の姿を見ると、いつも何とも言いようのない感情が赤石の心にこみ上げてくる。
以前は堅物で面白味の無いただの同期だと思っていたが、今年の春頃から雰囲気ががらりと変わり、急に目を牽き付けられるようになった。
雰囲気が変わった理由は、すぐに分かった。いや、分からせられた。
美術部で高価な油絵を購入してくれた実業家の顧客、柏木晃彦の自宅を油絵を飾ったから見に来るようにと誘われて訪れた折りに、彼に抱かれてよがる中原の姿を見せつけられたのだ。
勘のいい柏木に中原に惹かれている自分を見破られ、警告を受けたわけだ。
柏木に抱かれている中原は、とても淫らで、とても魅力的だった。あのまま、あの場所に留まっていたら、柏木に抱かれている中原に襲いかかってしまいそうなくらいだった。
赤石は中原をあきらめきれなかったが、そのあと本人に、きっぱりとふられた。
その上、中原に降りかかった事件の時、自分に何の反応も見せない中原の様子に、赤石は改めて否の返事を突きつけられた思いだった。
事件の後、出社してきた中原は強くなっていた。
柏木と上手くいっているのかと安堵するような、がっかりするような複雑な気分だった。
表面上は仲のよい同期に戻っていたが、内心では、赤石はまだ中原が欲しかった。
中原は赤石の声にはっとして、こっちを向いた。
「赤石、待ってたんだ」
中原は心なしか少しやつれているように見えたが、目だけが強く光っていて、妙な迫力と色気があった。
中原の身体に触れたい気持ちを押さえて、軽い調子で聞いた。
「何?俺に惚れてくれた?」
「……助けて欲しい。まだ僕に興味を持ってくれているなら、めちゃくちゃに抱いて欲しい……」
中原の目が真っすぐに赤石を見つめた。
でも、この目は俺に恋する目じゃない。
だれか違う人を見ている。
「……本気か?」
くそ!断れよ。俺。
「本気……」
中原のしなやかな身体が倒れ掛かってきた。ふわっと甘い香りが鼻腔をくすぐる。
頭の中が痺れるようになって、赤石は腕をまわして中原を抱き締めてしまった。
ブルーのライトが、暖房の効いた部屋のスペースのほとんどを占める大きなベッドを照らしている。
赤石と中原はぴんと張り詰めた空気の中、睨むようにお互いを見つめて立っていた。
「……後悔しないな」
「しない。物みたいに犯して」
中原は言うなり、着ているもの全てを脱ぎ捨てた。
白い裸身が青い光に染まって浮かび上がる。
「……っ」
その綺麗な細い身体に触れたくて、手が震えた。しかし、赤石はまだ迷っていた。
中原が突然、赤石の足元に跪いた。中原の白い手がベルトを緩め、下着ごとズボンを下げると、いきなり男根を飲みこんだ。
前髪の間から覗く大きな二重の目が苦しげに閉じられ、可愛い唇から覗く舌で、一心に赤石のものをしゃぶっている。
中原に与えられる刺激と、その光景だけでも、赤石の自制心は飛びそうだったのに、中原は指を舐めると自分の後ろに突き立てた。指が中で妖しく蠢いているのが外からでも分かった。
赤石の頭の中で何かが、ぶちっと音を立てて切れた。
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文化的価値も高い美術品を扱うのは細心の注意が必要で、貸出先との様々な細かい契約や保険業務にも神経を使う。
赤石はビビットな色合いのネクタイの結び目に指を入れて緩めると、太いフレームの眼鏡を外して目元を揉んだ。
疲れが溜まった身体での勤務はミスを招く。
帰り支度をするため、ロッカールームへ赤石は足を向けた。
コートを羽織り、メタリックシルバーのブリーフケースを手にロッカールームを出ようとした時、部屋の奥に人影があるのに気がついた。
「……中原?」
外商部所属の同期、中原悠司が長めの黒い前髪の下の二重の目を中空に向け、しなやかな身体を奥の壁に持たせかけてぼんやりと立っていた。
中原の姿を見ると、いつも何とも言いようのない感情が赤石の心にこみ上げてくる。
以前は堅物で面白味の無いただの同期だと思っていたが、今年の春頃から雰囲気ががらりと変わり、急に目を牽き付けられるようになった。
雰囲気が変わった理由は、すぐに分かった。いや、分からせられた。
美術部で高価な油絵を購入してくれた実業家の顧客、柏木晃彦の自宅を油絵を飾ったから見に来るようにと誘われて訪れた折りに、彼に抱かれてよがる中原の姿を見せつけられたのだ。
勘のいい柏木に中原に惹かれている自分を見破られ、警告を受けたわけだ。
柏木に抱かれている中原は、とても淫らで、とても魅力的だった。あのまま、あの場所に留まっていたら、柏木に抱かれている中原に襲いかかってしまいそうなくらいだった。
赤石は中原をあきらめきれなかったが、そのあと本人に、きっぱりとふられた。
その上、中原に降りかかった事件の時、自分に何の反応も見せない中原の様子に、赤石は改めて否の返事を突きつけられた思いだった。
事件の後、出社してきた中原は強くなっていた。
柏木と上手くいっているのかと安堵するような、がっかりするような複雑な気分だった。
表面上は仲のよい同期に戻っていたが、内心では、赤石はまだ中原が欲しかった。
中原は赤石の声にはっとして、こっちを向いた。
「赤石、待ってたんだ」
中原は心なしか少しやつれているように見えたが、目だけが強く光っていて、妙な迫力と色気があった。
中原の身体に触れたい気持ちを押さえて、軽い調子で聞いた。
「何?俺に惚れてくれた?」
「……助けて欲しい。まだ僕に興味を持ってくれているなら、めちゃくちゃに抱いて欲しい……」
中原の目が真っすぐに赤石を見つめた。
でも、この目は俺に恋する目じゃない。
だれか違う人を見ている。
「……本気か?」
くそ!断れよ。俺。
「本気……」
中原のしなやかな身体が倒れ掛かってきた。ふわっと甘い香りが鼻腔をくすぐる。
頭の中が痺れるようになって、赤石は腕をまわして中原を抱き締めてしまった。
ブルーのライトが、暖房の効いた部屋のスペースのほとんどを占める大きなベッドを照らしている。
赤石と中原はぴんと張り詰めた空気の中、睨むようにお互いを見つめて立っていた。
「……後悔しないな」
「しない。物みたいに犯して」
中原は言うなり、着ているもの全てを脱ぎ捨てた。
白い裸身が青い光に染まって浮かび上がる。
「……っ」
その綺麗な細い身体に触れたくて、手が震えた。しかし、赤石はまだ迷っていた。
中原が突然、赤石の足元に跪いた。中原の白い手がベルトを緩め、下着ごとズボンを下げると、いきなり男根を飲みこんだ。
前髪の間から覗く大きな二重の目が苦しげに閉じられ、可愛い唇から覗く舌で、一心に赤石のものをしゃぶっている。
中原に与えられる刺激と、その光景だけでも、赤石の自制心は飛びそうだったのに、中原は指を舐めると自分の後ろに突き立てた。指が中で妖しく蠢いているのが外からでも分かった。
赤石の頭の中で何かが、ぶちっと音を立てて切れた。
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