R18創作BL小説ブログです。性表現を多分に含みますので、18歳以上の方のみ、ご覧になって下さい。

(R18BL)闇の裏側 第1話
 同じ店名があるなんて、後から思い返してみればまるで悪魔の計略だった。
「……ここ、ここ。この店、イケてる女が多いんだってよ。俺たちなら、どの女でもお持ち帰り放題だぜ」
 頻繁に女を取り替えるモデル仲間は、整った、しかし軽薄そうな顔を自信たっぷりに歪めて笑うと、路上の小さな看板を指さした。
 十代のまだ幼さの残る雰囲気を、夜の匂いのする毒々しい服で覆い隠した他のモデル仲間達が、にやにやと追従するように笑う。
 新宿二丁目にほど近い、暗い路地の店だ。
 ぽっかりと地面に開いた四角い空間に、地下への階段が細く続いている。
「さっさと入ろうぜ」
 南島慎里は黒い鋲付きの革の服から髑髏のタトゥーを入れた腕を伸ばして隣の肩にまわした。
 仲間とはいえ、つるんで夜を過ごすだけの乾いた関係だ。
 親しげなその行動とは裏腹に、南島の瞳は暗く沈んでいた。 

 ……また馬鹿騒ぎが始まる。
 際限のない酒、頭に響く女の嬌声、今夜のセックスの相手を探る内容の無い嘘だらけの会話。
 同じ化粧、同じような服装の誰だか区別がつかないような女と2時間ほどのセックスをし、果てのない空しさを抱えたまま眠る。
 毎日が同じ事の繰り返しだ。
 髪を染めて立て、伊達ワルといわれるホスト予備軍のような格好をし、読者モデルとしてファッション誌の紙面を飾っても、この空しさはまるでなくならない。
 部屋に引きこもってようが、外で何人もの女と寝ようが、何も変わらない。
 南島の鋭い目に、更に深く暗い影が差した。

 階段の突き当たりにある重厚なドアの内側は、気怠げなジャズが流れる落ち着いた雰囲気のバーだった。
 柔らかな間接照明がアンティーク家具をアクセントに使った店内で、ゆったりと酒を楽しむ人々を照らしている。
 いい店なんだが、なにか妙だ。
 女が一人もいない……。
「……おいっ!ここ、ホモのたまり場だぜっ」
 先に入店していた仲間が軽薄な大声で叫んだ。
 モデルの同性愛は珍しくもないが、こいつは徹底した女好きで、ゲイを生理的に嫌っていた。

 びりっと空気が緊張した。
 店の客が一斉にこっちを見る。
 突き刺すような視線に晒されて、南島の肌はぴりぴりと痛んだ。
「うえっ、男同士でイチャついてるぜ。気持ちワリィ……」
 顔は良くても頭は空っぽらしい少年はどこまでも鈍感に言いつのった。
 これはやばいと南島が思う間もなく、客が何人か立ち上がりこっちへ近づいてくる。
「……ねえ、君たち、ずいぶん躾が悪い子達だよね」
「悪いけど、ここは君たちが来る所じゃないよ。出口はあちら」
 客達の言葉は柔らかかったが、その目は剣呑な光を宿していた。
「うるせえ。女も抱けねえくせに、オカマが偉そうな口叩くな」
 ここへ移動する前に飲んだ居酒屋のビールもまわっていたのだろう。怖い物知らずにも、少年はファイティングポーズをとって見せた。

 突然ざばっと水が降ってきた。
「熱い馬鹿には、昔から水をぶっかけるのが一番ってね」
 妙に愛想のいい太いフレームの眼鏡をかけた男が、空のデキャンターを片手に立っていた。 
「……てめっ」
 びしょ濡れの仲間が気色ばむ。
「お礼を言って欲しいくらいだな。このまま進むと、君たち袋だたきにあっちゃうよ。君の言うとおり、ここは男ばかりのバーなんだよ。きゃあきゃあ騒いで喧嘩を止めてくれる女の子なんて、いないのさ。まあ、君たちが女の子みたいに扱われちゃうかもしれないけどね」
 男は眼鏡の奥の目を細めて、にっこりと笑った。
「さあ、どうする?」

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