R18創作BL小説ブログです。性表現を多分に含みますので、18歳以上の方のみ、ご覧になって下さい。

(R18BL)油絵第1話
 高層ビル群が、初夏の午前の光を眩しく反射していた。
 新幹線ターミナルに直結したビルの中に15階分のスペースを占める大型百貨店は、開店20分前の緊張感を伴ったざわめきで包まれている。

「おはようございます」
 この百貨店の外商部に勤務している中原悠司は足早に守衛に朝の挨拶を返しながら、息を切らせて業務用エレベーターに漆黒の黒髪を持つしなやかな身体を滑り込ませた。
 大きな二重の目はまるでついさっきまで泣いていたかのように赤く濡れていて、少しセットの乱れた髪とボタンをひとつ外したワイシャツから出ている上気した首筋とが相俟って、場に不釣合いな色気がゆるゆると滲み出ていた。

 つい先ほどまで、中原は担当顧客である柏木晃彦の腕の中に抱かれていた。

 昨日、納品に訪れた柏木の自宅で、例によってそのまま寝室に引っ張り込まれ、ふと気がつくともう空が白んでいた。今日は重要な会議があると慌てていたら、柏木が自分の出勤ついでに中原の勤務先まで送ると言う。その言葉に甘えたが、柏木の運転するスポーツタイプのドイツ車は何故か中原の勤務先を通り過ぎ、隣接する客用駐車場に滑り込んだ。

 薄暗い屋内駐車場の車内で、柏木はおもむろにレバーを引いてベージュに染めた上質な皮でできている運転席のシートを一番後ろまで下げると、中原の方へ均整のとれた長身の身体を寄せてきた。
「ちょ、やめて下さいっ」
 柏木の意図を悟った中原は、助手席の奥のドアへ逃れようと身を翻したが、柏木の手が素早くドアの取っ手にかけられ、逃げ道を塞いだ。
「……まだ、出勤時間には早いよ」
 柏木は形のよい唇の端を少しあげて微笑んだ。

 中原の顔から血の気が引いた。確かにまだ出勤時間までには間があったが、いくら開店前で駐車場にはほとんど車が無いとはいえ、誰に覗かれても不思議ではないこんな場所での情事など、正気の沙汰とは思えなかった。

「駄目ですって、やめてっ……」
 圧し掛かってくる柏木を押し返そうと手を突っ張って力をこめるが、普段から社長の激務に耐えている柏木の体力には到底敵わない。

 瞬く間に両手首を捕まえられ頭上で纏められると、シートベルトをぐるぐると巻きつけられた。シートベルトが巻き取られる力が働いて、中原がもがけばもがくほど、手首はきつく拘束される。
 そうして中原の抵抗を封じておいて、柏木はゆっくりと仕立ての良いイタリア製のスーツの上着を脱いだ。

 柏木の手がベルトを緩め、スーツの下衣を肌蹴ていく。収縮性のある下着に柏木の長い指がかけられぐっと手前に引かれる。中原は涼しい空気が中に流れ込んでくるのを感じて、公共の場所で下半身を霰にされる恥ずかしさに震えた。
 柏木は切れ長な目でそこをじっと観察すると、冷静な声で言った。
「君のここは、もう熱くなっているようだね」 
 中原の顔が真っ赤に染まった。

 強制されて始まった関係だったが、柏木に対する恋心を自覚してしまってからというもの、このごろでは少し触れられるだけで勝手に快楽のスイッチが入るようになってしまっていた。

 まるで目で犯そうとでもしているような強い視線を、痛いほど局部に感じた。
「ね、どうして欲しいか言ってごらん」
 顔を至近距離に近づけた柏木がふうっと息を吹きかけてくる。
「……あ」
 そんなわずかな刺激にも、ぴくっと中原の欲望は嬉しげに跳ね上がった。
 身体が疼き、奥の方からじりじりと熱が上がってきて、もう我慢ができなくなる。

 僕はどうしようもない淫乱だ…。

 中原は深い自己嫌悪に陥りながら、腰を振ってねだった。
「……さ、触って、下さい……」
「指で?それとも舌で?」
 中原が口ごもっていると、柏木はまた温かな息を吹きかけてきた。敏感な先端を吐息だけで嬲られる。いつの間にかぽつんと丸く盛り上がっていた先走りが、息に吹き飛ばされて、つうっと側面を伝った。
「……し、舌で」
 中原は戦慄く唇から、小さな震え声を出した。
「聞こえないよ。もっと大きな声で」
 浅ましい様を見られたくなくて、中原は目をきつく閉じ顔を柔らかなシートに押し付けた。
「舌で、舐めて……」

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(R18BL)油絵第2話
「……あ、んん」
 中原は無意識に甘えた声を漏らしていた。
 彼の欲望は、運転席から身を乗り出して、中原の股間に顔を埋めている柏木の口内に、すっぽりと飲み込まれていた。
 
 奥深くまで咥えられ、柏木の舌に敏感な裏筋をうねうねと嬲られる。あまりの快感に腰が勝手に動いてしまう。
 すると柏木の指がそろりと後ろへ伸びてきた。今朝ほどまで柏木のものを咥えこんでいたそこは、まだ柔らかく解れていて、乾いていても簡単に柏木の指を飲み込んでいく。挿入された2本の指が、内壁をきつく押さえ、中原の腰の動きを内部から封じた。

 身体を動かして疼きを逃がすこともできなくなった中原の内で、行き所を無くした熱い塊が暴れまわった。
「だめっ……、もう、はなし、てっ……」
 しかし柏木は、いっそう強く中原の昂ぶりを吸い上げた。途端に腰部が跳ね、内腿と下腹部が痙攣する。
「……はあっ」
 大きく口を開け全身を震わせて、中原は柏木の喉の奥に自分の発情の証しを吐き出した。 

 出社時間が迫り柏木に解放されてからも、改めて自分の淫らさを突きつけられたようで、中原はどっぷりと深く落ち込んでいた。お天道様に顔向けできないように感じて、ついつい顔が下を向いてしまう。そのまま俯いて歩いていたら、廊下の曲がり角で向こうから歩いてきた人影と危うくぶつかりそうになった。
「……おっと」
 繊細な作りの手が、中原を抱きとめた。
「ああ、ちょうど良かったよ。中原」
 そこには美術部門担当で学芸員の資格を持つ赤石徹が、太いフレームのスクエアな眼鏡を光らせて立っていた。

 赤石は中原より2歳年上の28歳だったが、美術系大学の院を出てから入社しているため中原とは同期だった。同じようにスーツを着ていても、芸術創作に関わっていただけあって、どこかしらエキセントリックな雰囲気をまとっている。

 中原と連れ立ってオフィスへ向かいながら、同期ならではの砕けた口調で赤石は話を続けた。
「お前の担当の柏木様に探してくれって頼まれていた油絵のことだけど、渡欧時代初期の物で状態のいいのが入りそうなんだ」

 突然柏木の名前を出されて、中原の足は一瞬止まった。さっきまで自分がしていたことがふっと脳裏に蘇り、顔に勝手に血が上ってくる。
「上手く入ったら連絡するから、柏木様に美術画廊までご来店いただけるようにお願いしておいてくれよ」
「いいよ」
 中原は懸命に動揺を押さえて、勤めて平静な声を出すよう努力した。

「……ところで、お前、恋人でもできた?」
 中原は今度こそ、息を呑んで立ちすくんだ。
 全身が朱に染まる。
「当たりだろ。だって、お前、このところ凄く変わったぜ」
 赤石は、中原のおでこをつんと指で突いた。
「ちょっと前はがちがちの堅物で、周りの物には何にも興味がありませんって顔してたのに、今はなんか、雰囲気が柔らかくなった」

「……恋人なんか、いないよ」
 中原は、やっと言葉を搾り出した。

 柏木さんは恋人ではない。
 肉体関係はあるが、それだけだ。
 好きだの愛しているだのという会話と交わすわけでもなく、プライベートを打ち明けてくれる訳でもない。
 僕の中には柏木さんを好きだという気持ちが確かにあるけど、彼にとって僕は、単なる遊びだろう……。
 
「ということは、今フリーなんだな?」
 物思いにふけって、浮かない顔になった中原の肩に手をかけて引き寄せると、赤石は顔を耳に近づけて小声で言った。
「じゃあ、俺と付き合ってよ」
 絶句して固まっている中原に、赤石は続けた。
「俺、ゲイなの。知らなかった?」

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