西に傾きつつある太陽の光が窓から長く斜めに差し込み、黒とメタリックを基調としたシンプルな1DKの部屋を薄いオレンジ色に染めていた。
昼間はもうかなり暖かくなってきていたが、まだ夕刻は冷える。
中原は、男としてはいささか色の白すぎるしなやかな腕を、よろよろとベッドの中から伸ばして、枕元にあるエアコンのリモコンのスイッチを押した。
無性に身体がだるく、起き上がれなかった。会社の医務室で飲んだ解熱剤の効果が切れて、熱が上がってきたのかもしれない。
枕の冷たいところを探し頬をつけてぼんやりしていると、不意に昨夜の出来事が脳裏に蘇ってきて、恥辱の余り身体を捻って叫びだしたくなった。
それは、担当顧客の柏木晃彦に無理やり犯された、記憶だった。
だがそれ以上に中原を深く打ちのめしているのは、柏木の愛撫に応えてみだらに悶え狂ってしまった自分自身だった。
今日になって、混乱した精神と身体の奥が痛む身体を引きずってやっとの思いで出社し、柏木の担当の交代を課長に願い出たがにべもなく断られてしまった。
その理由が自分が担当を務めることが先方の希望であるためと知らされ、中原は目の前が真っ暗になった。
全国的には老舗とはいえども進出して間もない中原の勤め先と、この地方に古くからの歴史をもつ他の百貨店の間では、今、熾烈な外商顧客の取りあいが繰り広げられている。
トップクラスの売り上げを誇る柏木の要望は、絶対だろう。
僕は柏木さんから逃げられない……。
堪らない寒気を感じて、中原は上司の前でしゃがみこんでしまっていた。手足が氷のように冷たく、身震いが止められない。
いつの間にかひどく発熱している自分に、中原はやっと気づいた。
外はもう夜の帳が下りて、部屋の中にも静かに闇が忍び寄って来ていた。
ひどく喉が渇いていたが、どうしても身体を起こすことができない。いつもは気ままな1人暮らしの身が、今は無性に心細い。
中原は掛け布団を頭の上にまで引き上げると、ぎゅっと目をつぶった。
……何時の間にか眠ってしまったらしい。
口を覆う柔らかな感触に、ふっと意識が戻ってくる。
ぬるりとしたものが唇を舐め、濡れた感覚を残して離れていく。
誰かが枕元に立っていた。
見慣れた自分の部屋の中に、コートをざっくりと肩から羽織った長身のシルエットが強烈な違和感を放って浮かび上がっている。
切長の冷たい眼差しが、じっと自分を見下ろしていた。
……柏木さんだ。
これは夢……かな。
ゆっくりと手が伸びてきて、中原の額にそっと当てられた。
冷えた手のひらが、すうっと熱を吸い取ってくれているようで、とても気持ちがいい。
中原はうっとり微笑んだ。
「病気の時は素直だね」
笑いを含んだ声が聞こえた。
……この声。
中原ははっと目を見開いた。
「……柏木さんっ、何故貴方がここに……」
中原は慌てて身体を起こそうとしたが、眩暈がしてすぐベッドに倒れこんでしまう。
「寝てなさい」
中原の癖の無い漆黒の前髪に手を差し込んでくしゃっと掻き乱すと、柏木は一目で一流メゾンの物だと分かる仕立ての良い薄手のコートを肩から下ろし、スーツの上着も脱いで傍らのソファの上に無造作に置いた。ネクタイを背中の方へ垂らしたワイシャツ姿のよく引き締まった長身の身体が、キッチンの方へ消えていくのを、中原は呆然と見送った。
しばらく物音が続き、やがて皿を持った柏木が姿を見せた。
中原の寝ているベッドの真ん中あたりに斜めに腰を掛け、スプーンで掬った皿の中のものを顔の前に突き出す。
「ほら、口を開けて」
林檎のいい匂いが鼻腔をくすぐる。瑞々しい香りの誘惑に負けて、中原はおずおずと唇を開いた。
摩り下ろした林檎の甘い水分が、乾ききった身体にじんわり染み渡る。
一口食べてしまった後は、もう夢中で親鳥に餌をねだる雛のように口を開けてしまった。自分がどれだけ飢えていたかを改めて思い知る。
皿がすっかり空になり、中原の渇きが癒えるまで、林檎は何度も口元に運ばれた。
その後柏木は、中原に手を貸してトイレに行かせ、温かい蒸しタオルで身体を拭き、清潔な衣服に着替えさせた。中原はそのたびごとに丁重に断ったが、柏木の強引な手早さと発熱からくるだるさとで、結局されるがままになってしまった。
きれいに整えられたベッドの中に落ち着いた後、中原は思い切って柏木に告げた。
「……ありがとうございました」
黙ったまま端正な顔に浮かぶ笑みで中原に応えると、柏木はおもむろにワイシャツの胸ポケットから旧式なガラスと水銀で出来ている体温計を取り出した。
「さて、熱を測っておこうか」
突然、中原は荒々しく布団を剥ぎ取られ、身体の下に手を差し込まれて俯せに裏返された。
衣服の間に手が入ってきて下着ごとズボンを膝まで一気に下げると、剥き出しになった谷間の窄まりにつぷっと体温計を突き立てられた。
「やっ、何するんですかっ」
驚愕して暴れる身体を長い腕できつく押さえつけて、柏木は中原の髪を唇でかき分け、耳の後ろから低く囁いた。
「動くと、中で割れるよ……」
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昼間はもうかなり暖かくなってきていたが、まだ夕刻は冷える。
中原は、男としてはいささか色の白すぎるしなやかな腕を、よろよろとベッドの中から伸ばして、枕元にあるエアコンのリモコンのスイッチを押した。
無性に身体がだるく、起き上がれなかった。会社の医務室で飲んだ解熱剤の効果が切れて、熱が上がってきたのかもしれない。
枕の冷たいところを探し頬をつけてぼんやりしていると、不意に昨夜の出来事が脳裏に蘇ってきて、恥辱の余り身体を捻って叫びだしたくなった。
それは、担当顧客の柏木晃彦に無理やり犯された、記憶だった。
だがそれ以上に中原を深く打ちのめしているのは、柏木の愛撫に応えてみだらに悶え狂ってしまった自分自身だった。
今日になって、混乱した精神と身体の奥が痛む身体を引きずってやっとの思いで出社し、柏木の担当の交代を課長に願い出たがにべもなく断られてしまった。
その理由が自分が担当を務めることが先方の希望であるためと知らされ、中原は目の前が真っ暗になった。
全国的には老舗とはいえども進出して間もない中原の勤め先と、この地方に古くからの歴史をもつ他の百貨店の間では、今、熾烈な外商顧客の取りあいが繰り広げられている。
トップクラスの売り上げを誇る柏木の要望は、絶対だろう。
僕は柏木さんから逃げられない……。
堪らない寒気を感じて、中原は上司の前でしゃがみこんでしまっていた。手足が氷のように冷たく、身震いが止められない。
いつの間にかひどく発熱している自分に、中原はやっと気づいた。
外はもう夜の帳が下りて、部屋の中にも静かに闇が忍び寄って来ていた。
ひどく喉が渇いていたが、どうしても身体を起こすことができない。いつもは気ままな1人暮らしの身が、今は無性に心細い。
中原は掛け布団を頭の上にまで引き上げると、ぎゅっと目をつぶった。
……何時の間にか眠ってしまったらしい。
口を覆う柔らかな感触に、ふっと意識が戻ってくる。
ぬるりとしたものが唇を舐め、濡れた感覚を残して離れていく。
誰かが枕元に立っていた。
見慣れた自分の部屋の中に、コートをざっくりと肩から羽織った長身のシルエットが強烈な違和感を放って浮かび上がっている。
切長の冷たい眼差しが、じっと自分を見下ろしていた。
……柏木さんだ。
これは夢……かな。
ゆっくりと手が伸びてきて、中原の額にそっと当てられた。
冷えた手のひらが、すうっと熱を吸い取ってくれているようで、とても気持ちがいい。
中原はうっとり微笑んだ。
「病気の時は素直だね」
笑いを含んだ声が聞こえた。
……この声。
中原ははっと目を見開いた。
「……柏木さんっ、何故貴方がここに……」
中原は慌てて身体を起こそうとしたが、眩暈がしてすぐベッドに倒れこんでしまう。
「寝てなさい」
中原の癖の無い漆黒の前髪に手を差し込んでくしゃっと掻き乱すと、柏木は一目で一流メゾンの物だと分かる仕立ての良い薄手のコートを肩から下ろし、スーツの上着も脱いで傍らのソファの上に無造作に置いた。ネクタイを背中の方へ垂らしたワイシャツ姿のよく引き締まった長身の身体が、キッチンの方へ消えていくのを、中原は呆然と見送った。
しばらく物音が続き、やがて皿を持った柏木が姿を見せた。
中原の寝ているベッドの真ん中あたりに斜めに腰を掛け、スプーンで掬った皿の中のものを顔の前に突き出す。
「ほら、口を開けて」
林檎のいい匂いが鼻腔をくすぐる。瑞々しい香りの誘惑に負けて、中原はおずおずと唇を開いた。
摩り下ろした林檎の甘い水分が、乾ききった身体にじんわり染み渡る。
一口食べてしまった後は、もう夢中で親鳥に餌をねだる雛のように口を開けてしまった。自分がどれだけ飢えていたかを改めて思い知る。
皿がすっかり空になり、中原の渇きが癒えるまで、林檎は何度も口元に運ばれた。
その後柏木は、中原に手を貸してトイレに行かせ、温かい蒸しタオルで身体を拭き、清潔な衣服に着替えさせた。中原はそのたびごとに丁重に断ったが、柏木の強引な手早さと発熱からくるだるさとで、結局されるがままになってしまった。
きれいに整えられたベッドの中に落ち着いた後、中原は思い切って柏木に告げた。
「……ありがとうございました」
黙ったまま端正な顔に浮かぶ笑みで中原に応えると、柏木はおもむろにワイシャツの胸ポケットから旧式なガラスと水銀で出来ている体温計を取り出した。
「さて、熱を測っておこうか」
突然、中原は荒々しく布団を剥ぎ取られ、身体の下に手を差し込まれて俯せに裏返された。
衣服の間に手が入ってきて下着ごとズボンを膝まで一気に下げると、剥き出しになった谷間の窄まりにつぷっと体温計を突き立てられた。
「やっ、何するんですかっ」
驚愕して暴れる身体を長い腕できつく押さえつけて、柏木は中原の髪を唇でかき分け、耳の後ろから低く囁いた。
「動くと、中で割れるよ……」
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冷たいガラスの棒が、中原の中にずぶずぶと埋まっていく。
「そうだね、だいたい5分くらいかな」
長い指で優雅に体温計の端を摘まんで奥へと押し込みながら、柏木はちらりと壁の時計に目をやった。
身体の内部でガラスが砕けることを恐れて、中原は身動きが取れないでいた。硬く冷たいものが粘膜の中をゆっくりと進んでくる。
内側の敏感な凝りを棒がつうっと掠めて行って、中原は思わず小さく身体を震わせた。無意識に内壁が収縮してきゅっと締め付けてしまう。
「中原君、そんなにきつく食わえこんだんじゃ危ないよ」
柏木の手が双球をやさしく撫でた。
「ほら、息を吐いて、ここを緩めて」
まるで尻尾のようにぴんと棒を立てている恥ずかしい有様の入り口に唾液をぽとんと垂らされ、濡れた細かい襞を指でやわやわと揉み解される。
ふっと締りの緩んだ隙をついて、ガラスの棒の全てがぐっと中に押し込まれた。
「や、やだっ、出して下さいっ」
身体の中に割れ物を入れられてしまった恐怖に、中原は震えて柏木に懇願した。
しかし柏木はベッドから離れると、傍らのソファに悠然と長い足を組んで腰をかけ、下肢を剥き出し身体を丸めて固まっている中原をゆったりと眺めた。
「5分間、我慢しなさい」
少しでも身体を動かそうものならガラスを折ってしまいそうで、必死に後孔の力を抜く。意識することでかえって感覚が敏感になり、身体の中の異物の存在をまざまざと感じさせられた。
熱が一段と上がったようで、身体中が熱い。
中原は深く息を吐いて、ひたすら耐えた。
中原にとっては永劫とも思えた数分間が過ぎた。
「抜いてあげるから、おしりに手をかけて広げてごらん」
中原は顔を真っ赤に染めて叫んだ。
「できませんっ」
「じゃあ、いつまでもそのままだね」
ソファにゆったりと身を預けたままの、柏木の静かな声音が部屋に響いた。
そんな情けない羞態を晒すくらいなら、いっそ自分で……。
中原は下唇を噛み締め、身体を動かさないように気をつけてそろそろと右手を自分の後ろに回した。人差し指を孔門に当て、思い切って指先に力をこめる。ぬぷっと指先が自分の中に入り込んだ。
まるで自分で自分を犯しているような、それとも犯されているような狂った感覚の中で、異物を探して柔らかく熱い粘膜の中で必死に指を動かす。
指の先に棒が当たるのは分かるのだが、一本の指では棒に触れられても掴むことは出来ない。
弄っているうちに、かえってだんだんと奥へと押し込むことになってしまい、中原は途方にくれて熱い身体を細かく震わせた。
本人に自覚はなかったが、黒髪を乱し白い肌を上気させ、まるで自慰にでも耽るかように指を動かしている中原の姿は壮絶に淫靡であった。
黙って見ていた柏木の目にゆらっと暗い炎が燈った。
シーツに顔を押し付けて荒く呼吸していた中原の半開きの唇に、不意に長い指が二本入って来た。口内の粘膜をぐるりと辿り、たっぷりの唾液をすくって出て行く。
肘を後ろに引かれずるりと抜けた自分の指と入れ替わるように、柏木の指が内部に深く突き入れられた。
「だいぶ奥に入れてしまったようだね」
少し考えるような柏木の声が聞こえて、中原は手をつかまれ、掌で自分の尻朶を左右に開くようにされる。
「中がよく見えるよう、そのまま押さえていなさい」
早くこの状態から解放されたくて、中原はとうとう柏木の言葉に従ってしまった。悔しさと敗北感が胸から溢れて全身に広がってくるようで、中原は唇を強く噛み締めた。
柏木の指が体の更に奥で蠢く。
「……んっ」
自分の指では感じなかった甘美な疼きが急に込み上げてきて、中原は戸惑った。柏木の指が触れている所から甘い痺れが沸き起こり、波がうち寄せるように身体の中を伝わってきて、自然に熱い吐息が漏れた。
「もう少し、緩めて」
叱るように言われて、慌てて大きく息を吐き意識して身体の力を抜く。
「そう、上手だ……」
体の中の異物が柏木の指に掴まって、ゆっくりと出口のほうへ動いていくのが分かった。すっかり中原の体温と同化し温かくなったガラスが、すうっと引き抜かれる。
そのわずかな刺激にさえも中原の身体は悦びに震えた。
柏木によって長い時間を掛けてさんざん肉の悦びを教え込まれた身体は、その指をよく覚えていたようだ。
自分の状態を知られたくなくて背を向けて丸まり、熱く昂ぶり始めた性器を隠して足を閉じて唇を噛み締め、込み上げてくる喘ぎを押し殺す。
自分の奥底から、昨晩の快楽の残滓がゆっくりと頭を擡げて来るような感覚に、中原は怯えた。
柏木は、中原の中で温められ濡らされて、てらてらと光っている体温計を掲げてじっと見ていた。
「38,8度。……解熱剤が必要だね」
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「そうだね、だいたい5分くらいかな」
長い指で優雅に体温計の端を摘まんで奥へと押し込みながら、柏木はちらりと壁の時計に目をやった。
身体の内部でガラスが砕けることを恐れて、中原は身動きが取れないでいた。硬く冷たいものが粘膜の中をゆっくりと進んでくる。
内側の敏感な凝りを棒がつうっと掠めて行って、中原は思わず小さく身体を震わせた。無意識に内壁が収縮してきゅっと締め付けてしまう。
「中原君、そんなにきつく食わえこんだんじゃ危ないよ」
柏木の手が双球をやさしく撫でた。
「ほら、息を吐いて、ここを緩めて」
まるで尻尾のようにぴんと棒を立てている恥ずかしい有様の入り口に唾液をぽとんと垂らされ、濡れた細かい襞を指でやわやわと揉み解される。
ふっと締りの緩んだ隙をついて、ガラスの棒の全てがぐっと中に押し込まれた。
「や、やだっ、出して下さいっ」
身体の中に割れ物を入れられてしまった恐怖に、中原は震えて柏木に懇願した。
しかし柏木はベッドから離れると、傍らのソファに悠然と長い足を組んで腰をかけ、下肢を剥き出し身体を丸めて固まっている中原をゆったりと眺めた。
「5分間、我慢しなさい」
少しでも身体を動かそうものならガラスを折ってしまいそうで、必死に後孔の力を抜く。意識することでかえって感覚が敏感になり、身体の中の異物の存在をまざまざと感じさせられた。
熱が一段と上がったようで、身体中が熱い。
中原は深く息を吐いて、ひたすら耐えた。
中原にとっては永劫とも思えた数分間が過ぎた。
「抜いてあげるから、おしりに手をかけて広げてごらん」
中原は顔を真っ赤に染めて叫んだ。
「できませんっ」
「じゃあ、いつまでもそのままだね」
ソファにゆったりと身を預けたままの、柏木の静かな声音が部屋に響いた。
そんな情けない羞態を晒すくらいなら、いっそ自分で……。
中原は下唇を噛み締め、身体を動かさないように気をつけてそろそろと右手を自分の後ろに回した。人差し指を孔門に当て、思い切って指先に力をこめる。ぬぷっと指先が自分の中に入り込んだ。
まるで自分で自分を犯しているような、それとも犯されているような狂った感覚の中で、異物を探して柔らかく熱い粘膜の中で必死に指を動かす。
指の先に棒が当たるのは分かるのだが、一本の指では棒に触れられても掴むことは出来ない。
弄っているうちに、かえってだんだんと奥へと押し込むことになってしまい、中原は途方にくれて熱い身体を細かく震わせた。
本人に自覚はなかったが、黒髪を乱し白い肌を上気させ、まるで自慰にでも耽るかように指を動かしている中原の姿は壮絶に淫靡であった。
黙って見ていた柏木の目にゆらっと暗い炎が燈った。
シーツに顔を押し付けて荒く呼吸していた中原の半開きの唇に、不意に長い指が二本入って来た。口内の粘膜をぐるりと辿り、たっぷりの唾液をすくって出て行く。
肘を後ろに引かれずるりと抜けた自分の指と入れ替わるように、柏木の指が内部に深く突き入れられた。
「だいぶ奥に入れてしまったようだね」
少し考えるような柏木の声が聞こえて、中原は手をつかまれ、掌で自分の尻朶を左右に開くようにされる。
「中がよく見えるよう、そのまま押さえていなさい」
早くこの状態から解放されたくて、中原はとうとう柏木の言葉に従ってしまった。悔しさと敗北感が胸から溢れて全身に広がってくるようで、中原は唇を強く噛み締めた。
柏木の指が体の更に奥で蠢く。
「……んっ」
自分の指では感じなかった甘美な疼きが急に込み上げてきて、中原は戸惑った。柏木の指が触れている所から甘い痺れが沸き起こり、波がうち寄せるように身体の中を伝わってきて、自然に熱い吐息が漏れた。
「もう少し、緩めて」
叱るように言われて、慌てて大きく息を吐き意識して身体の力を抜く。
「そう、上手だ……」
体の中の異物が柏木の指に掴まって、ゆっくりと出口のほうへ動いていくのが分かった。すっかり中原の体温と同化し温かくなったガラスが、すうっと引き抜かれる。
そのわずかな刺激にさえも中原の身体は悦びに震えた。
柏木によって長い時間を掛けてさんざん肉の悦びを教え込まれた身体は、その指をよく覚えていたようだ。
自分の状態を知られたくなくて背を向けて丸まり、熱く昂ぶり始めた性器を隠して足を閉じて唇を噛み締め、込み上げてくる喘ぎを押し殺す。
自分の奥底から、昨晩の快楽の残滓がゆっくりと頭を擡げて来るような感覚に、中原は怯えた。
柏木は、中原の中で温められ濡らされて、てらてらと光っている体温計を掲げてじっと見ていた。
「38,8度。……解熱剤が必要だね」
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