名前を呼ばれたような気がして、中原悠司はシーツを干していた手を止めた。ブルーサックスのコットンシャツから出たすんなりした色白の手を目の上にかざし、辺りを見回す。
今日は初夏の日差しがさんさんと降り注ぎ、汗ばむような陽気だ。
きっと洗濯物がよく乾くぞと思いながら、ベランダから下を覗いてみた。
この家の主であり、中原の最愛の人でもある柏木晃彦のナチュラルなベージュ色のブルゾンに身を包んだ長身の姿がテラスに見えた。
少し茶色がかった髪がまぶしい陽光を通してきらきらと光っている。両手には、家庭菜園で取れたのであろう野菜を籠に山盛りに持っていた。
「呼びました?」
ベタンダから声をかけると、柏木が上を見上げて微笑んだ。
一緒に住むようになってもう3ヶ月が過ぎ、すっかり見慣れている顔のはずなのに、未だにその切れ長の目を持つ端正な顔で笑いかけられると胸がどきりとする。
「そこにいたのか。洗濯なら、乾燥機に入れてしまえば早いよ」
「お日様の匂いが好きなんですよ」
柏木にそう返しながら、せめて洗濯ぐらいはさせて下さいと中原は心の中で呟いた。
もう一時も離れていられなくて柏木の家に同居したのはいいが、柏木は会社の仕事がなくなって手が空いた途端、メイドサービスを断って自ら家事を完璧にこなしだした。
家中をピカピカに磨き上げ、仕事から帰ってくる中原を待つのは栄養計算とテーブルコーディネートまでが完璧な食卓だ。
これではまるで奥さんをもらってしまったようだと、中原は困惑した。
自分が亭主だとすると、勤務先から出る給料では、とてもこの家を維持できないだろう。
どうしよう、二人で僕のマンションに引っ越した方がいいんだろうかなどの中原の心配をよそに、柏木は会社経営をしていた頃の人脈でしょっちゅうパーティに呼ばれては、次の仕事を探り、とうとう料理研究家、兼テーブルコーディネーターとして仕事をするようになってしまった。
さすが柏木というべきか、結構な額をまた彼は稼ぎ出した。
その上、家事も手を抜かないので、中原は身の置き所がなくて洗濯を自分の仕事に定めたのだが、少し目を離すと手早い柏木にされてしまう。
休日の今日は久しぶりに思う存分洗濯が出来て、すがすがしい気分の中原なのであった。
「……わっ」
ベランダの柵に肘をついて、のんびり風に吹かれていた中原は、突然後ろから長い腕に抱き寄せられて驚いた。
振り返ると柏木が泥だらけの顔で笑っている。
「ああっ!シーツに泥が!!」
「あとで、僕が洗っておくよ。それより、是非、君に聞いておきたいことがあったのを思い出してね」
「……なんですか」
自分の仕事をふいにされて、少しふくれっつらの中原は尋ねた。
「あの冬の日、君を抱いたのは誰だ……」
柏木の目は、刃のようにぎらりと光っていた。
まずい。
赤石が危ない。
「え、えっと……」
「答えて……」
「柏木さんこそっ、琥珀のネックレスをあげたい女の人がいたんじゃないですかっ」
よし、反撃できたぞ。
「……女?なんのことだ?」
「古い話かもしれませんが、僕はずっと心に引っ掛っていたんです」
柏木はしばらく眉を寄せて考えていたが、はっと得心した表情で顔を上げた。
「ああ、あの琥珀のネックレスか。あれなら最初から、君の中に挿れてよがらせるつもりで買ったんだよ……」
「なっ……」
中原の顔が真っ赤に染まった。
「あの日、僕は夕食を作って君を待っていた。でも、いくら待っても君は来ないし、料理は冷めてどんどん不味くなるし、最悪だったよ」
柏木は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔になったが、表情を一転して明るくすると、「君を迎えに行ってからは最高だったけどね」と、笑った。
中原はますます赤くなった。
「そうだね。今夜あたり、もう一度ネックレスを挿れてあげよう」
「……遠慮させていただきます」
「今夜は、たっぷり濡らして広げてから、優しく挿れてあげるよ……」
「もうっ!ばかっ!」
中原は泥のついたシーツで柏木をばんばん打った。
柏木が身体に打ち付けられるシーツを鷲掴みにするとぐいっと自分の方に引っ張った。シーツを掴んでいた中原も、つられて柏木の方へ転げ込む。
気がつくと中原は、ベランダの床に広がった生乾きのシーツの上に組み伏せられていた。
「……午後から、近所の奥様方相手の料理サロンがあるんでしょ」
「テーブルコーディネートも食材の下ごしらえも終わった。まだ1時間ぐらい時間がある……」
柏木の唇が首筋に落ちてきた。
たったそれだけなのに、中原の身体は甘くとろりと溶け出してしまう。
「……んっ」
「明るいお日様の下で、君を抱きたいな……」
柏木の長い指に、シャツのボタンをひとつまたひとつと外され、剥き出しの肌に暖かな日光が当たった。
中原は土と太陽の匂いのする髪に口付けし、腕を伸ばして柏木を引き寄せた。
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今日は初夏の日差しがさんさんと降り注ぎ、汗ばむような陽気だ。
きっと洗濯物がよく乾くぞと思いながら、ベランダから下を覗いてみた。
この家の主であり、中原の最愛の人でもある柏木晃彦のナチュラルなベージュ色のブルゾンに身を包んだ長身の姿がテラスに見えた。
少し茶色がかった髪がまぶしい陽光を通してきらきらと光っている。両手には、家庭菜園で取れたのであろう野菜を籠に山盛りに持っていた。
「呼びました?」
ベタンダから声をかけると、柏木が上を見上げて微笑んだ。
一緒に住むようになってもう3ヶ月が過ぎ、すっかり見慣れている顔のはずなのに、未だにその切れ長の目を持つ端正な顔で笑いかけられると胸がどきりとする。
「そこにいたのか。洗濯なら、乾燥機に入れてしまえば早いよ」
「お日様の匂いが好きなんですよ」
柏木にそう返しながら、せめて洗濯ぐらいはさせて下さいと中原は心の中で呟いた。
もう一時も離れていられなくて柏木の家に同居したのはいいが、柏木は会社の仕事がなくなって手が空いた途端、メイドサービスを断って自ら家事を完璧にこなしだした。
家中をピカピカに磨き上げ、仕事から帰ってくる中原を待つのは栄養計算とテーブルコーディネートまでが完璧な食卓だ。
これではまるで奥さんをもらってしまったようだと、中原は困惑した。
自分が亭主だとすると、勤務先から出る給料では、とてもこの家を維持できないだろう。
どうしよう、二人で僕のマンションに引っ越した方がいいんだろうかなどの中原の心配をよそに、柏木は会社経営をしていた頃の人脈でしょっちゅうパーティに呼ばれては、次の仕事を探り、とうとう料理研究家、兼テーブルコーディネーターとして仕事をするようになってしまった。
さすが柏木というべきか、結構な額をまた彼は稼ぎ出した。
その上、家事も手を抜かないので、中原は身の置き所がなくて洗濯を自分の仕事に定めたのだが、少し目を離すと手早い柏木にされてしまう。
休日の今日は久しぶりに思う存分洗濯が出来て、すがすがしい気分の中原なのであった。
「……わっ」
ベランダの柵に肘をついて、のんびり風に吹かれていた中原は、突然後ろから長い腕に抱き寄せられて驚いた。
振り返ると柏木が泥だらけの顔で笑っている。
「ああっ!シーツに泥が!!」
「あとで、僕が洗っておくよ。それより、是非、君に聞いておきたいことがあったのを思い出してね」
「……なんですか」
自分の仕事をふいにされて、少しふくれっつらの中原は尋ねた。
「あの冬の日、君を抱いたのは誰だ……」
柏木の目は、刃のようにぎらりと光っていた。
まずい。
赤石が危ない。
「え、えっと……」
「答えて……」
「柏木さんこそっ、琥珀のネックレスをあげたい女の人がいたんじゃないですかっ」
よし、反撃できたぞ。
「……女?なんのことだ?」
「古い話かもしれませんが、僕はずっと心に引っ掛っていたんです」
柏木はしばらく眉を寄せて考えていたが、はっと得心した表情で顔を上げた。
「ああ、あの琥珀のネックレスか。あれなら最初から、君の中に挿れてよがらせるつもりで買ったんだよ……」
「なっ……」
中原の顔が真っ赤に染まった。
「あの日、僕は夕食を作って君を待っていた。でも、いくら待っても君は来ないし、料理は冷めてどんどん不味くなるし、最悪だったよ」
柏木は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔になったが、表情を一転して明るくすると、「君を迎えに行ってからは最高だったけどね」と、笑った。
中原はますます赤くなった。
「そうだね。今夜あたり、もう一度ネックレスを挿れてあげよう」
「……遠慮させていただきます」
「今夜は、たっぷり濡らして広げてから、優しく挿れてあげるよ……」
「もうっ!ばかっ!」
中原は泥のついたシーツで柏木をばんばん打った。
柏木が身体に打ち付けられるシーツを鷲掴みにするとぐいっと自分の方に引っ張った。シーツを掴んでいた中原も、つられて柏木の方へ転げ込む。
気がつくと中原は、ベランダの床に広がった生乾きのシーツの上に組み伏せられていた。
「……午後から、近所の奥様方相手の料理サロンがあるんでしょ」
「テーブルコーディネートも食材の下ごしらえも終わった。まだ1時間ぐらい時間がある……」
柏木の唇が首筋に落ちてきた。
たったそれだけなのに、中原の身体は甘くとろりと溶け出してしまう。
「……んっ」
「明るいお日様の下で、君を抱きたいな……」
柏木の長い指に、シャツのボタンをひとつまたひとつと外され、剥き出しの肌に暖かな日光が当たった。
中原は土と太陽の匂いのする髪に口付けし、腕を伸ばして柏木を引き寄せた。
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「……だめっ、時間で、す……っ、……抜いてっ」
「もう一回……、もう一回だけさせて」
中原は、前だけを乱した涼しい顔の柏木に、シャツを剥がされ、白いハーフパンツを膝まで下げられて、膝立ちになった後ろから貫かれていた。
ベランダに落ちたシーツは、いまや泥だけでなく、二人の放った精液でどろどろに汚れている。
中原の中で一度達した柏木の昂ぶりはまだ強度を保ったままで、主人の欲望を主張していた。
「……やっ」
柏木は程よく濡れて滑る中原の内を、前にも増して勢いよく突き始めた。
ベランダの柵を握っていないと、勢いに押されて今にも倒れてしまいそうだ。
「……あっ、あっ、ああ……んんっ」
快楽の凝りを擦られ、前方にも愛撫の手を加えられて、どうしても甘い声が漏れてしまう。
柏木の手が中原の腰をしっかりと固定し、いよいよ激しく貪り始めたとき、ピンポーンと明るいチャイムの音が響いた。
中原を穿つリズムの速さを落とした柏木が、傍らに置いてあったドアフォンの端末を手に取った。
「……いらっしゃい。今、門を開けますから、キッチンまでそのまま進んで下さい。……ええ、僕もすぐ行きます」
端末で自動制御の門を開ける気配がした。
中原は信じられない思いで、柏木を振り返った。
客がちょっと上を見上げたら、あられもない姿で交わっている僕たちが目に飛び込んでくるだろう。
中原は必死に柏木の楔から逃れようと腰をひねったが、柏木はますますがっちりと中原の腰を掴み、抽挿の速度を上げた。
「……ん、んん……っ」
唇を噛み締めて中原は声を堪えた。
下の庭から、御近所に住む品のいい奥様方の笑いさざめく声が近づいてきて、中原の胸は早鐘のように打った。
「……う」
その声がすぐ下まで迫ってきたとき、中原は思わず、自分の指を口に突き入れた。
ぎりっと噛み締めて、痛みで快楽を相殺する。
がちゃりと玄関ドアの開く音がして声が家の中に吸い込まれ、再び辺りが静まり返ったとき、安堵のあまり力が抜けた中原の身体を、柏木が深々と抉った。
「う……、くうう……っ」
身内を駆け抜ける快楽に身体をびくびくっと痙攣させて、中原はベランダの柵の間から、白い液体を散らした。
「……ふ」
絶頂の興奮に蠕動し震える中原の内部に締め上げられて、柏木は満足そうな吐息を漏らすと、中原の奥に自分も欲望を放った。
「じゃあ、君は少し後で顔を出してね」
「……いやです」
全身、汗と体液に塗れた中原は、シャワーを浴びながら柏木の方を見ないで言った。
「どうして?」
どうしてだって?
中原は先週の料理サロンのことを思い出していた。
柏木がお世話になっているのだから同居人として挨拶をしなくてはと、顔を出したのが運のつきで、柏木に肩を抱かれ、彼は僕の恋人ですダーリンですハニーですなどと堂々と吹聴されて、死ぬほど恥ずかしい思いをしたのだ。
「……いいから、僕のことは放って置いてください」
「今日のメンバーにも君を紹介しておきたかったのに、残念だよ」
「早く行かないと、皆さんお待ちかねです。お仕事ですよ」
中原の言葉に、しぶしぶ柏木はキッチンへ降りていった。
シャワーの水流の下で、中原は大きな溜息をついた。
強い日差しの下でさんざん弄ばれた身体は少し日焼けしたようで、シャワーに打たれるとひりひりと痛んだ。
柏木さんのことは大好きだけど、このままのペースでいくと僕はやり殺されてしまうんじゃないだろうか……。
せめて昼寝でもして、体力の回復を図ろう。
中原はタオルを被ってバスルームから出ると、よろよろとベッドの中へ這いずりこんだ。
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「もう一回……、もう一回だけさせて」
中原は、前だけを乱した涼しい顔の柏木に、シャツを剥がされ、白いハーフパンツを膝まで下げられて、膝立ちになった後ろから貫かれていた。
ベランダに落ちたシーツは、いまや泥だけでなく、二人の放った精液でどろどろに汚れている。
中原の中で一度達した柏木の昂ぶりはまだ強度を保ったままで、主人の欲望を主張していた。
「……やっ」
柏木は程よく濡れて滑る中原の内を、前にも増して勢いよく突き始めた。
ベランダの柵を握っていないと、勢いに押されて今にも倒れてしまいそうだ。
「……あっ、あっ、ああ……んんっ」
快楽の凝りを擦られ、前方にも愛撫の手を加えられて、どうしても甘い声が漏れてしまう。
柏木の手が中原の腰をしっかりと固定し、いよいよ激しく貪り始めたとき、ピンポーンと明るいチャイムの音が響いた。
中原を穿つリズムの速さを落とした柏木が、傍らに置いてあったドアフォンの端末を手に取った。
「……いらっしゃい。今、門を開けますから、キッチンまでそのまま進んで下さい。……ええ、僕もすぐ行きます」
端末で自動制御の門を開ける気配がした。
中原は信じられない思いで、柏木を振り返った。
客がちょっと上を見上げたら、あられもない姿で交わっている僕たちが目に飛び込んでくるだろう。
中原は必死に柏木の楔から逃れようと腰をひねったが、柏木はますますがっちりと中原の腰を掴み、抽挿の速度を上げた。
「……ん、んん……っ」
唇を噛み締めて中原は声を堪えた。
下の庭から、御近所に住む品のいい奥様方の笑いさざめく声が近づいてきて、中原の胸は早鐘のように打った。
「……う」
その声がすぐ下まで迫ってきたとき、中原は思わず、自分の指を口に突き入れた。
ぎりっと噛み締めて、痛みで快楽を相殺する。
がちゃりと玄関ドアの開く音がして声が家の中に吸い込まれ、再び辺りが静まり返ったとき、安堵のあまり力が抜けた中原の身体を、柏木が深々と抉った。
「う……、くうう……っ」
身内を駆け抜ける快楽に身体をびくびくっと痙攣させて、中原はベランダの柵の間から、白い液体を散らした。
「……ふ」
絶頂の興奮に蠕動し震える中原の内部に締め上げられて、柏木は満足そうな吐息を漏らすと、中原の奥に自分も欲望を放った。
「じゃあ、君は少し後で顔を出してね」
「……いやです」
全身、汗と体液に塗れた中原は、シャワーを浴びながら柏木の方を見ないで言った。
「どうして?」
どうしてだって?
中原は先週の料理サロンのことを思い出していた。
柏木がお世話になっているのだから同居人として挨拶をしなくてはと、顔を出したのが運のつきで、柏木に肩を抱かれ、彼は僕の恋人ですダーリンですハニーですなどと堂々と吹聴されて、死ぬほど恥ずかしい思いをしたのだ。
「……いいから、僕のことは放って置いてください」
「今日のメンバーにも君を紹介しておきたかったのに、残念だよ」
「早く行かないと、皆さんお待ちかねです。お仕事ですよ」
中原の言葉に、しぶしぶ柏木はキッチンへ降りていった。
シャワーの水流の下で、中原は大きな溜息をついた。
強い日差しの下でさんざん弄ばれた身体は少し日焼けしたようで、シャワーに打たれるとひりひりと痛んだ。
柏木さんのことは大好きだけど、このままのペースでいくと僕はやり殺されてしまうんじゃないだろうか……。
せめて昼寝でもして、体力の回復を図ろう。
中原はタオルを被ってバスルームから出ると、よろよろとベッドの中へ這いずりこんだ。
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